欧州におけるデジタル戦略(続)

更新日:2021年10月14日

サマリー:

さて前回の投稿で、欧州におけるデジタル戦略 デジタルシングルマーケット構想について触れました。 問題認識としては市民の諸手続きのオンライン化が遅れているというデジタル政府の視点で、この視点で欧州の状況をもう少し紐解くのが本日のトピックです。 (注意: 日本は遅れているという悲観的メッセージを前回投稿しましたが、マイナポータルにまつわるサービスは急速に進化している事実を追って確認していますので、後日 最新状況について触れることとします)


今回は:  ① 欧州のデジタル戦略の概要と特徴について触れた後、

②欧州の電子政府化の状況と計画を踏まえ、

③日本から見た大きな違いについての意見をまとめます。

 

① 欧州のデジタル戦略

日本のデジタル戦略としてはSociety5.0を目標モデルとした検討が進んでおり、徐々にSociety5.0という言葉自体を見聞する機会も増えてきていますが、総務省・経産省などの過去の検討経緯を調査すると、欧州のデジタル戦略は日本のデジタル戦略の検討過程の参考とされていると十分に推察できます。


デジタルシングルマーケット構想はデジタル統一市場の確立を目標に2015年に発行されましたが、その後1〜2年単位で補完する政策・法制度・具体計画を発行・施行されています。具体的な例としては、特にホームページの管理などを行なっている方は「個人情報保護に関する同意」に関する対応としてGDPR対応など求められたことがある方も多いのではないでしょうか?


まず経緯を大きくまとめると以下の図の流れとなり、まず2016年にクラウドイニシアチブとGDPR(EU一般データ保護規則)が、少々間をおいて2020年に更新版のデジタル戦略が発行され、さらに今年 2030 Digital Compass: the European way for the Digital Decade というタイトルで今後10年間にEUが実行する施策と実現目標をまとめたロードマップが示されました。


まずここまでの経緯の中で注目すべき点は、 GDPRに次ぐ法規制としてGAFAに代表される米国を中心とした域外のデジタルプラットフォーマーに対する牽制と、EU域内のデジタル化のレベル向上の施策です。


EUのデジタル戦略としては「EU独自の」やり方で、世界でのデジタル競争優位を築くという目標があり、そのための技術的な投資を積極的に行なっています。これを補完する形で検討されたデジタル市場法・デジタルサービス法案は、域外プラットフォーマーへの牽制という意味でEUの明確なスタンスを示していると思います。

また、同時に戦略投資としてはHorizon Europeという巨大な研究開発プログラム(位置付け的には日本のSIPに近いという理解)が推進されており、AI・認証・セキュリティなどの要素技術から、応用技術としての自動運転、STEM教育まで、新たな社会の実現に求められるイノベーション要素にたいして一つのプログラム傘下で多くの実証実験が行われており、諸外国の牽制と投資がバランスよく取り組まれている状況と理解しています。


参考図: 欧州のデジタル関連政策発表の経緯(筆者作成)

詳細な情報は、駐日欧州連合代表部(https://eeas.europa.eu/delegations/japan_ja)が積極的な情報発信を行なっており、概要の理解に非常に参考になります。


② デジタル・コンパスの目指すところと電子政府

2030 Digital Compass: the European way for the Digital Decade) 

さて、今年発表されたデジタルコンパスですが、中身をみると

  1. デジタルスキルの育成

  2. デジタルインフラ整備

  3. ビジネスのDX (特に中小規模の企業におけるデジタル技術活用)

  4. 政府のDX:公共サービスの100%デジタル化を中心とした電子政府

となっており、日本におけるデジタル政策目標と近しい印象を受けますが、今回着目するのは、上記4の政府のDXです。政府DXは、主要な公共サービス:100%オンライン化、医療サービス:電子カルテ導入100%、デジタルID:80%の市民がデジタルID利用を目標にしていますが、ここが前回の課題認識とリンクするポイントです。

 

注目すべき点は、これはEUに所属する各国レベルでの電子政府を示すのではなく、EUの国全体を統合したEU全体レベルでの電子政府化という目標であることです。

EU加盟国すべての網羅はできていませんが、EU加盟国は日本のマイナンバーカードに相当する身分証(IDカード)の導入が早かったこともあり普及率が高く、公的な電子IDの普及と公的電子IDを利用した各国の政府サービスのオンライン化がすでに進展してる状況です。

今回、各国でほぼ構築済の電子政府システムをEU加盟国間でのサービス連携に発展し、EU内のどの国にいても共通の認証基盤を用いて各国の政府サービスを受けることができるという基盤を構築し、また利用する公的なIDについての普及率をEU全体で80%を目指すという内容です。


またEU共通の公的な電子IDは、Digital Walletというスマートフォンで利用可能なアプリケーションでサービスで提供するという計画で、本アプリはEU域内での身分証(パスポート)・免許証としての利用、公共交通機関の利用(電子チケット)、政府サービス利用の際の認証端末(ログイン認証器)として利用する目論見です。


EU政府へのリンク: https://ec.europa.eu/info/strategy/priorities-2019-2024/europe-fit-digital-age/european-digital-identity_en


まとめ


今回は概要としてのEUにおけるデジタル化戦略と電子政府の実装計画をまとめましたが、私が常々欧州の動きをみて感心するのは、施策の見た目ではなく、以下に掲示する合意形成プロセスと政策実行力です。

  1. 文化・言語背景が異なるEU各国による利害を超えた合意形成プロセス

  2. シンプルで分かり易い明確な方針と実行にむけた論理的な施策の構造展開

  3. 安易に骨抜きにせずチームEUで推進する政策実行力と実行スピード

EUの基本方向はGreen & Digitalで、全ての政策が誰の目にも明らかな形でこの方針に則って展開されています。この方針は短期的には加盟国間、EU政府内の各省庁間でも立場によって非常に利害関係が分かれる複雑な課題ですが、SDGs の実現遵守を前提と場合には対応が必須となる課題です。こうした課題に対して、国同士の調整を終えた形での政策策定と、各国レベルで政策実行まで含めて、日本より先行して見える程のスピード感で実行されている、EUの意思決定と実行力にまず感心します。

さらに、驚くのは今回は電子政府の側面からしか見ていませんが、教育行政、運輸行政、都市計画で最新の方針や検討を調査すると、単に方針・方向性が合っているだけでなく、横の軸で見た政策レベルでの整合性が、かなり明確な形でとられていることです。

これは政策の検討が省庁などの主幹部門の中に閉じず、クロスファンクショナルな人選で検討を行い広い視野で検討し、決定に際しては立場による利害ではなく、全体的な目標に照らして正しいのか正しくないのかという価値基準で決定をすることが徹底されていることが生合成を担保し、またスピード感の向上に貢献しているのではないかと考えます。


 この点について、今後リーダーシップの観点から掘り下げてみたいと思います。また、この状況を捉えて当初は、日本は後塵を廃していると捉えていましたが、マイナポータルの実装やサービスユースケースの拡大を含めた進化がかなりありますので、今度触れたいと思います。





 

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