IT投資決定の考え方まとめ

今回は先日お寄せいただいた社内のシステム刷新の検討がなかなか進まない、検討の決め手がないと言うご質問を受けましたので、回答の概略を読み物的にまとめました。

IT投資は大企業では日常茶飯事ではあるのですが、世間一般で見た場合はその頻度が少なく内訳・効果がわかりにくい一方でまとまった投資額となるため、決定するための軸(決め方)が分かりにくいと言う事だと本質問の意図と解釈しました。


IT投資も通常の投資同様、必然性・必要性と効果の観点から投資額を評価して決定すると言う点では同じ考え方なのですが、問題はその費用の中身(内訳)を直感的に意思決定側がレビューできないと言うところが問題であると考えます。


一般的な予備知識として抑えて頂きたいものとして、 以下5点を挙げます。

① 投資費用の内訳とおよその構成比

② ワンタイム費用とランニング費用の区分とその中身

③ 手組み開発(フルカスタム)とパッケージの違い

④ 資産保有型(オンプレ)と利用料型(クラウド)の違い

⑤ IT導入の一般的工程と費用のかかり方


これらを踏まえた上で、何を視点にレビューすれば良いのか?(リスクコントロールポイント)を明確にすれば、投資判断は通常案件通りに実施すれば良いと思いますので、 上記5つのそれぞれのポイントを以下に記します。

① 費用の内訳とおよその構成比

 A. ソフトウェア購入費用(資産)

 B. ハードウェア購入費用(資産)

 C. システム(ソフト+ハード)導入費用(資産)

 D. 運用費用(コスト) 注)税務的な解釈はいろいろありますので専門家に譲ります。

絶対額はもちろん対象のシステム・規模によって異なりますが、最大の費用を占めるのが

C.システム導入費用です。さらにこれを発生タイミングという軸で並べることも重要ですが、それは⑤項に記します。

② ワンタイム費用とランニング費用の名目とその中身

通常上記の内、A. ソフトウェア購入費用、B. ハードウェア購入費用、C.システム導入費用はワンタイム費用で減価償却、D.運用費用は毎年繰り返し発生します 。


③ 手組み開発(フルカスタム)とパッケージの違い

簡単に分けると

 - 要件に合わせ一から手作りでワンオフ制作をする

 - 出来合いのもの(パッケージ)を買ってきて自分好みにする(自分好みのカスタマイズにも松竹梅があります)


ワンオフ型の場合、自分の欲しいものを究極的に突き詰めることができますが、作り手のウデ(モノづくり力)への依存性が高く、費用も高くなりますので(基本的に人工)、「ここだけは」という部分に限定するのが望ましいです。 特に、完成後の維持運用は全てお客様特別仕様のため、運用できる技術者が限定されるため、運用も高いという点が注意必要です。


パッケージ型は、出来合いのよくある要件をすでに組み込んだソフトを買ってきますので、汎用性がある分安いが、それでも、お客様の企業で利用を開始する場合には、設定作業(据え付け作業)も必要ですし、痒いところに手が届かない(帯に短し襷に長し)が世の常ですので、そうした改造が必要です。 人によってはパッケージはあくまで部品と割り切り、徹底カスタムする人もいますが、出来るだけ標準に留めることが賢明です。 なぜなら、クルマを例にとれば、お客様自身で改造したクルマはディーラーでは面倒を見きれない(見てくれない)為、ワンオフ同様維持費が高くつきます。 さらに、ソフトウェアにはメーカーが提供する無償のアップデート(機能追加やセキュリティの更新など)がありますが、これの適用も難しくなってしまいます。(適合性をメーカーが保証しない為)

ですので、この基本性質を十分理解した上で、部分によって使い分け、重要で譲れないところはワンオフだが、その他は標準そのままというようなバランスの選択を意思を持って行うことが重要です。


④ 資産保有型(オンプレ)と利用料型(クラウド)の違い

ソフト+ハードを購入してしまう(車の購入)のがオンプレ(オン・プレミス)という購入タイプで、費用的にはワンタイムの購入費用で済みますが、運用保守のメンテナンス費は自社持ちとなります。

これに対して利用料を定期的に払うことでメンテナンス費用がかからない(車のリース契約やカーシェアリング)のがクラウド型となります。月々やユーザー単位などの課金体系はありますが、定期的に使用料を払うことで、サービスを利用すると言う考え方です。 ただしリースアップはありませんので、使う限り利用料の支払いが必要ですが、利用料にはハードウェア・ソフトウェアの利用料と、運用費用、定期メンテナンスやアップデートも費用に含まれ、運用保守の手間は少なくなります。

ただし、システム導入費用は両方とも発生するが、クラウドの方が一般的に金額は少なくなる(期間も短い)という点にも留意必要です。


⑤ IT導入の一般的工程と費用のかかり方

では、費用はいつからどういう風にかかるのかという点についていうと、ライセンス・ハードの購入は基本的にプロジェクト初期に一括して発生します。 ベンダーは保守で儲けようというロジックもあるため通常値引きがあることが多いです。 あくまでベンダーとは保守も含めたトータルで交渉することが重要です。

システムの導入工程は、

企画立案→投資判断→全体設計(業務・システム)→詳細設計(業務・システム)→開発・単体テスト→システムテスト→ユーザー受入テスト→トレーニング→既存業務システムからの切り替え(移行作業)→保守の立ち上げと開始→既存システムの終息

のライフサイクルを辿ります。


もっとも大きな費用が発生するのは詳細設計・開発フェーズで、この工程以降で失敗すると手戻り(リカバリー)にかかる費用が大きくなります。


よくある手戻りの発生原因としては、以下があります。

 A. 要件定義・設計の抜け漏れ・不整合 

 B. 開発・テスト品質の悪さ 

 C. ユーザーによる受け入れ拒否 

 D. 切り替え作業の失敗



まとめ


それぞれの問題は各工程の品質に依存していますので、いつどのような問題が起きることが経営としてクリティカルなのかを踏まえてしっかりと管理をしていけば基本的に大きな問題は発生しないので、そうしたプロジェクト管理計画を立案することが重要です。特に、プロジェクト企画時点でその実施意義と費用、リスクの発生箇所をしっかりと経営サイドが認識した上で実行判断を行うことができればリスクは相当下がると考えています。

さらに、その後全体設計工程の中で、業務とシステムのそれぞれの設計の全体整合性と網羅性を担保できれば、ユーザー企業側に起因するプロジェクト失敗確率は相当下げられると思います。


一番ダメなのは、わからないからベンダーに一任すること。 信頼できるベンダーであっても、良きに計らった判断が間違える、問題を申告できず自体が悪化するなどがあるため、お互いが責任を持って実施することが重要です。 

システム導入に関する法的な係争は非常に多く、ユーザー企業側が監督義務や品質を問うて係争を起こしますが、争点のほとんどはベンダー側の瑕疵過失だけでなく、ユーザー側企業の善管注意義務がどの程度果たされていたかも争点となりますので、ユーザー企業側も責任を持った体制で臨む必要があります。


#システム化投資

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